「消えたら終わりだな」をAIに相談したら、その日のうちに自動バックアップが動き出した

私は日々のタスクを、Mac標準の「スティッキーズ」に溜めています。デスクトップに付箋を貼れるだけの、ずいぶん古くからあるアプリです。
数えてみたら、2枚の付箋に約5万字が入っていました。案件ごとのToDo、あとで確認すること、思いついたメモ。仕事の中身がほぼ全部そこにあります。
起動が速くて、キー1つで前面に出て、書いたら勝手に保存される。この軽さが気に入って、半年ほど使っています。
使い始めてまだ半年で、この量です。この先も増える一方だろうな、と思ったときに、引っかかることがありました。
これ、消えたらどうなるんだろう。
スティッキーズには、バックアップ機能もクラウド同期もありません。Macが壊れたら、あるいは何かの拍子にデータが飛んだら、それで終わりです。
「作業」ではなく「不安」を相談してみた
普段、AI(Claude Code)に仕事を頼むときは「これをやって」という形で頼みます。でもこのときは、頼む内容が自分でも決まっていませんでした。何をどうすればいいのか分かっていない。あるのは漠然とした不安だけです。
なので、そのまま相談しました。
スティッキーズにタスクを全部書いてるんだけど、消えたら終わりだなと不安。どうしたらいい?
返ってきたのは、まず現状の整理でした。
- スティッキーズのデータは
~/Library/Containers/com.apple.Stickies/の下に.rtfdという形式で保存されている - アプリ自体にバックアップ機能・同期機能は無い
- Time Machineを使っているなら含まれてはいるが、日次で確実に、かつ中身をすぐ読める形で残したいなら、別に仕組みを作ったほうがいい
そのうえで「毎日決まった時刻に、別の場所へコピーする仕組みを作りましょう」という提案が出てきました。
言われてみればそれだけの話です。それでも自分ひとりだと「不安だな」で止まったまま、何か月も放置していました。やることが決まっていない状態から、やることを決めるところまでを一緒にやってくれる。まず、これが相談の効果でした。
相談で終わらないのが、エージェントの強み
ただ、ここまでならブラウザでChatGPTに相談するのと大きくは変わりません。話を聞いてもらって、方針が見えて、「よし、やるか」となる。ここまでは、多くの方がすでにやっていることだと思います。
今回違ったのは、この続きがあったことです。
私が使っているClaude Codeは、チャットの相手ではなくAIエージェントです。私のMacの中でファイルを読み書きし、コマンドを実行し、結果を見て次の手を打てます。つまり「じゃあ作りましょう」となった瞬間から、そのまま作り始められる。
相談と実行の間に、自分で手を動かす段差がありません。
ここが分かれ目でした。方針が見えたところで「あとは自分でやろう」と持ち帰っていたら、たぶんまた何か月か放置していたと思います。バックアップの手順を調べて、スクリプトを書いて、自動実行の設定をして……と考えた時点で、私はもう別の仕事に戻っていたはずです。
「良いアイデアが出た」で終わるか、「動くものができた」まで行くか。実際に困りごとが減るかどうかは、ここで決まります。
どう残すかを、その場で詰めた
方針が決まってからは、条件をやり取りしながら詰めていきました。
1. 上書きではなく、日付ごとに残す
最新版だけを保存していると、「間違って消したことに翌日気づく」パターンで詰みます。日付フォルダに世代を残して、90日を過ぎた分は自動で消える形にしました。
2. 元データに加えて、テキストにも変換して置く
.rtfd はスティッキーズ用の形式です。アプリごと壊れたときに開けないと意味がないので、macOS標準の textutil で全部の付箋をつないだ1本のテキストファイルも一緒に作ってもらいました。これがあると、あとから中身を検索することもできます。
3. ローカルとGoogle Driveの2か所に置く
Macの中だけに保存しても、Mac自体が壊れたら一緒に消えます。Google Driveを操作できる環境はすでに作ってあったので、そこへ毎日同期する形にしました。
4. 空っぽのバックアップで上書きしない
これはAI側から出てきた安全策です。何かの理由で読み取りに失敗したとき、中身が空のフォルダを「今日のバックアップ」として保存してしまうと、バックアップはあるのに中身が無いという一番まずい状態になります。取れた付箋の数と文字数を数えて、明らかに少なければエラーで止めて前日分を残す、という作りにしてもらいました。
ここまで決めたら、あとは書いてもらうだけです。
AIがつまずいたところ
処理そのものはすぐできました。手こずったのは「毎朝、自動で動かす」部分です。
macOSには、あるアプリが他のアプリのデータを勝手に読めないようにする保護(フルディスクアクセス)があります。スティッキーズのデータもその中にあります。手で実行する分にはターミナルに許可が出ているので読めるのですが、自動実行の仕組みから起動すると、その許可が引き継がれず読み取りに失敗する。
ログにはこう出ていました。
[2026-07-27 09:25:36] ERROR: .../Stickies を読めません(フルディスクアクセス未許可の可能性)
[2026-07-27 09:30:00] ERROR: .../Stickies を読めません(フルディスクアクセス未許可の可能性)
[2026-07-27 09:30:11] ERROR: .../Stickies を読めません(フルディスクアクセス未許可の可能性)
ここからAIが試行錯誤を始めます。「専用のアプリを作って、そのアプリのほうに許可を与えれば動くはず」という方針は当たっていたのですが、その中身をシェルスクリプトにしたせいで通りませんでした。OSからは「シェルスクリプトを実行しているbash」に見えるので、アプリに与えた許可が効かないのです。同じ壁に2回ぶつかったあと、原因にたどり着いていました。
最終的には、C言語で数行のごく小さな起動役を書いてコンパイルし、それを実体とするアプリを作って、そこからバックアップ処理を呼ぶ形に落ち着きました。
正直に言うと、私はこの解決策を自力では出せません。「自動実行にはフルディスクアクセスが引き継がれない」も「アプリの実行ファイルがシェルスクリプトだと許可が効かない」も、知らなかった話です。
そしてこの過程で、私がやったのは1つだけでした。
システム設定 → プライバシーとセキュリティ → フルディスクアクセス に、このアプリを追加してチェックを入れてください
macOSの許可設定は、セキュリティ上、人がクリックしないと変えられません。AIが代われない部分です。逆に言えば、それ以外は全部やってもらえました。
今どうなっているか
毎朝9:30に、自動でバックアップが取られています。
[2026-07-27 09:44:39] ローカル保存 OK: ~/backup/stickies/2026-07-27 (メモ 2件 / 50163文字)
[2026-07-27 09:44:39] Google Drive 同期 OK: gdrive:01_BlueLeaf/19_バックアップ/stickies/2026-07-27
私は何もしません。付箋はこれまで通り使うだけです。もし何かあっても、失うのは最大で1日分です。
気にしながら放置していた「消えたら終わり」が、その日の午前中で片づきました。
渡せるのは「作業」だけじゃない
この件で一番大きかったのは、バックアップが取れるようになったことよりも、相談から入れたことでした。
以前、AI活用には4つのレベルがあるという記事を書きました。一番下のレベル1が「相談する」です。入り口の段階のように見えますが、実際はそうではなくて、レベル1と、レベル3の「任せる」はつながっています。
- 相談する = 何をすべきか分からない状態を、やることに変える
- 任せる = 決まったやることを、まるごと渡す
今回はこれが一続きで起きました。「不安だ」から入って、最後には毎朝勝手に動く仕組みになっている。途中で私が「AIに頼める形のタスク」に翻訳し直す作業は、していません。
この一続きが起きるのは、相談相手がそのまま実行できるAI、つまりエージェントだからです。相談だけで終わるなら、決まった「やること」は自分のToDoに積まれるだけで、結局そこで止まります。
たぶん多くの方の手元にも、「気になってはいるけれど、何をすればいいか分からないから放置していること」がいくつかあると思います。私にとってのそれが、この付箋でした。
やることが決まっていないものこそ、決まっていないまま相談していい。 これが今回のAI活用のポイントです。
