Xの情報収集をAIに任せたら、道が2本あった──「探す」はGrok、「確かめる」は公式API

X で情報を集める作業を、いまだに手でやっていないでしょうか。
「この分野で最近どんな話が出ているか知りたい」と思って検索窓に単語を入れ、出てきた投稿を片っ端から開いて、良さそうなものをメモに貼る。あるいは資料に引用するために、投稿のいいね数を目で見て書き写す。私も少し前まで全部これでした。
先日この作業をAIに任せられる形に組み替えたのですが、調べていく中で「そもそも道が2本ある」ことが分かりました。しかもこの2本は、どちらが優れているという関係ではありません。用途が違うので、両方あって初めて仕事になります。
この記事では、その2本の違いと、実際にどう組み合わせて使うかを書きます。
道その1:X公式のAPI
1つめは、X社が公式に提供しているAPIです。
xurl という公式のコマンドラインツールが用意されていて、これを入れるとターミナルから X のデータを取れるようになります。MCP(AIから外部ツールを使うための仕組み)としても提供されているので、AIから直接叩かせることもできます。
特徴は「正確さ」です。投稿のIDやURLを渡すと、その投稿の本文・投稿者・いいね数・リポスト数・表示回数・添付画像・引用元まで、生のデータがそのまま返ってきます。加工されていません。
そして、投稿できるのはこちらだけです。読むだけでなく書き込みたいなら、選択肢はこれ一択になります。
弱点もあります。キーワード検索は「その単語が含まれているか」しか見ないので、言い回しが違うと拾えません。そして検索できる範囲は直近7日以内です(それより前を遡るには上位プランが必要で、月額が大きく上がります)。
道その2:Grok の API
2つめは、X社傘下の xAI が提供している Grok のAPIです。
こちらは性格がまったく違います。AIがXを検索して、読んで、要約して返してくれます。 キーワードの一致ではなく意味で探すので、「経理の手作業に困っていると自分の言葉で書いている投稿」のような、単語で指定しにくい探し方ができます。
期間の縛りもありません。1年前の投稿でも探せます。スレッド全体をまとめて取ってくることもできます。
弱点は、返ってくるのがAIの要約だということです。ここが後で効いてきます。
決定的な違いは「探す」か「確かめる」か
整理すると、こうなります。
| やりたいこと | どちらを使うか |
|---|---|
| 「〜について何が言われている?」から探す | Grok |
| URLが分かっている投稿を正確に読む | X公式 |
| いいね数・表示回数を資料に載せる | X公式 |
| 1週間より前まで遡って探す | Grok |
| スレッド全体を読む | Grok |
| 投稿する | X公式 |
一言でまとめると、「探す」のがGrok、「確かめる」「書く」のがX公式です。
実際の使い方:探してから、確かめる
そして実務で効くのは、どちらか一方を選ぶことではなく、つなげて使うことでした。
- Grokで探す — 問いを投げて、関連する投稿のURL一覧をもらう
- X公式で確かめる — もらったURLを渡して、生のデータを取り直す
なぜ2段構えにするのか。実際に試したときの結果を出します。
「AI関連で、いいねが100以上ついている直近の日本語投稿」をGrokに探してもらい、返ってきた投稿のいいね数と表示回数を、X公式APIで照合しました。
| 項目 | Grokの回答 | X公式APIの実測 |
|---|---|---|
| 投稿Aのいいね数 | 1009 | 1,009 |
| 投稿Bのいいね数 | 299 | 299 |
| 投稿Cのいいね数 | 181 | 181 |
完全に一致しました。 ここは信用していい数字です。
ところが同じ日、別の検索で「投稿された時期も教えて」と指定せずに聞いたところ、Grokは全件を「2024年7月」と答えました。実際には2026年7月の投稿で、2年ずれています。
同じAIの、同じ応答の中で、片方は完全に正確、片方は完全に間違い。何が違ったのか。
聞いたか、聞かなかったかです。
いいね数は「いいね数も併記して」と指定していたので、AIは実際に取得した値をそのまま出しました。投稿時期は指定していなかったので、文脈から推測して埋めました。そして推測は外れました。
ここから引き出せる作法は単純です。
欲しい項目は、全部クエリに書く。書かせていない値は信じない。
「AIは信用できる/できない」という二択で考えると、この使い分けは出てきません。聞いたことは正確に返し、聞かなかったことは埋める、という性質として理解しておくと、扱い方が決まります。
だから「探す」と「確かめる」を分けます。探す側に正確さを求めず、数字を使う段階で必ず生データに当て直す。この順番なら、AIの得意なところだけを使えます。
検索条件は、思ったより細かく指定できる
もうひとつ実務的な発見がありました。
Grok に渡す文章の中に、X の検索演算子をそのまま書けます。
min_faves:100 いいね100以上
min_retweets:20 リポスト20以上
lang:ja 日本語のみ
-filter:replies リプライを除外
「AIエージェントの実務利用について、min_faves:300 lang:ja を満たす投稿を3つ」といった書き方が通ります。反応が伸びている投稿だけを拾いたいときに効きます。
ただしこれは公式ドキュメントに記載がなく、私が実際に動かして確認した挙動です。将来変わる可能性があるので、使うときは結果を目視で確かめてください。
セットアップは、思ったより軽い
「APIを2種類使う」と聞くと構えてしまいますが、実際に人間がやった作業はこれだけでした。
X公式のほうは、コマンドを1つ実行してブラウザで「許可」を押すだけです。
Grokのほうは、xAIのコンソールでアカウントを作り、クレジットカードを登録して利用分を購入し、発行されたキーを設定ファイルに1行書きます。
コマンドを書く、検索用のスクリプトを組む、エラーの原因を調べる、といった作業はすべてAI側がやりました。人間の担当は「ブラウザで承認する」と「支払う」の2つだけです。
そしてこれは偶然ではありません。ブラウザの承認画面はAIには押せませんし、クレジットカードの登録も任せるべきではありません。AIができない部分だけが人間に残るという切り分けになっています。
「人間がAIを使って効率化する」というより、AIが働けるように人間が足りない部分を埋める、と考えたほうが実態に近いと感じています。以前、DNSの管理をCloudflareに移した話を書きましたが、あのときの乗り換え理由も「管理画面のポチポチはAIに渡せない」でした。同じ考え方です。
なお、こうした「AIにどこまで任せるか」の段階については、AI活用の4つのレベルという記事で整理しています。今回の話は、そのうち「任せる」の段階にあたります。
費用の目安
Grok側は従量課金です。実際に4回試したときの金額は、1回あたり $0.11 / $0.26 / $0.41 / $1.35 でした。
10倍以上の差がついていますが、これは検索条件の絞り込み具合で読み込む投稿量が変わるためです。料金の大半は「AIが読んだ投稿の量」で決まるので、期間や条件を絞るほど安くなります。逆に「最近のAIの話題を全部教えて」のような広い聞き方をすると跳ね上がります。
つまり、雑に聞くと高くつきます。 条件を丁寧に書くことが、精度だけでなくコストにも効いてきます。
まとめ
- Xを機械的に扱う道は2本ある。X公式APIとGrok API
- 探すのはGrok、確かめる・書くのはX公式。どちらか一方ではなく、つないで使う
- AIの出力は「聞いたことは正確、聞かなかったことは推測」。欲しい項目は全部クエリに書き、数字を使うときは生データに当て直す
- セットアップで人間がやるのは承認と支払いだけ。残りはAIに任せられる
情報収集を手作業でやっている時間は、思っているより積み上がっています。まず「探す」だけ、あるいは「確かめる」だけでも自動化してみると、削れる量が見えてくるはずです。
