Claude Code活用 #9 不具合の相談から見積もり・送付メールまで、一人の担当者のようにAIに任せた

「一人の担当者」のように、AIに一連の仕事を任せた(Claude Code活用 #9)

AIの使い方というと、「これ教えて」「この文章直して」といった一問一答を思い浮かべる方が多いと思います。でも今のAIは、そこにとどまりません。性質の違う作業が数珠つなぎになった“一連の仕事”を通しで受け持ち、最後に成果物まで出す——いわば、一人の担当者(社員)のように働かせることができます。今回は、それが実際どんな感じなのかを、丸ごとお見せします。

題材にしたのは、保守案件でよく来る「この不具合、直せますか?いくらでできますか?」という一本の相談です。これに答えるには、対象の確認 → 原因と直し方の確認 → 見積書づくり → お客様への送付メールという、本来なら担当者が頭から順にこなす工程がつながっています。この一連を、まるごと Claude Code に任せてみました。人間がやったのは、総額をいくらにするかの判断と、最後に送信ボタンを押すことくらい。読者は、受託開発・制作会社・社内のシステム担当の方を想定しています。

来た相談:全角スペースだと検索が効かない

対象は、Perl(CGI)で動く、あるコーポレートサイトの保守案件です。お客様からの相談はこうでした。

サイト内のキーワード検索で、半角スペースで区切ると複数語のAND検索になるのに、全角スペースだと効かない。全角でもAND検索にしてほしい。対応できるか、いくらでできるかを知りたい。

この一本の相談に答えるには、性質の違う作業が数珠つなぎになっています。(1)どの機能の話かを確認し、(2)原因と直し方を確認し、(3)工数と金額に積み、(4)送付メールを整える。ふだんは担当者がこれを頭から順にこなしていきます。その一連を、AIに通しで担当してもらいました。

① 対象の確認:どの機能の話で、影響はどこまで及ぶか

最初に担当者がやるのは「で、これはサイトのどこの話?」の切り分けです。Claude Code はソースを追いかけ、この検索がサイト内の特定の一機能だけで使われていること、そして関係する処理が1つのファイルの1つの関数にしかないことを確認しました。

見積もりで一番怖いのは、後から「実はあそこも直さないと動きませんでした」と発覚して追加費用になることです。「他のページには波及しない」と最初に言い切れると、そのリスクを織り込んだ安全な見積もりになります。担当者が経験と調査でやる影響範囲の見極めを、AIがコード全体を確認したうえでやってくれた、というわけです。

② 修正内容の確認:原因の核心まで、AIが降りていった

次は原因究明です。ここでAIは、表面的な「全角に未対応なんだろう」で止まらず、なかなか味わい深い事実にたどり着きました。

「全角対応のコードは、2年前から書いてあった」

調べていくと、全角スペースでも区切るためのコードは、2年前の実装当初からすでに書かれていたことが分かりました。それなのに動いていない。ここが今回のハイライトです。

理由をかみ砕くと、プログラムが文字を「意味を持った1文字」として見ているか、「ただのバイトの並び」として見ているかがズレていた、という話です。

全角スペースは、コンピュータの内部では複数バイトの組み合わせで表されます。区切りを判定するコードのほうは「全角スペースという“1文字”」を探しにいくのに、検索キーワードは処理の途中で「意味を持たないバイトの列」のまま渡ってきていた。そのため両者がすれ違い、全角スペースだけが区切り文字として認識されずにすり抜けていました。半角スペースはたまたまこのズレの影響を受けない表現だったので、半角のときだけ正常に動く——報告された症状にぴったり一致します。

一見「全角に対応していない」ように見えて、実は「対応コードはあるのに、文字の扱いのズレで働いていなかった」。表面だけ見て「全角対応を新規に作ります」と見積もると、実態とズレます。 原因の層まで降りたからこそ、直し方も工数も正確に出せました。AIはこの後、「入力を正しい“文字”として受け取り直してから区切り、既存の半角の挙動は変えない(回帰させない)」という具体的な修正方針と、検証すべきテスト観点(全角・半角・混在・連続スペース・空文字など)まで並べてくれました。

③ 見積作成:工数に分解して、そのまま見積書に

原因と直し方、影響範囲が固まれば、あとは金額です。AIは作業を 「調査・修正」「テスト(観点出しと記録)」「リリース・動作確認」「連絡・見積書作成」 に分解し、「開発自体は数行で軽微だが、リリースやテスト・連絡まで含めて2人日ほどの規模」という、根拠を説明できる見積もりに落とし込みました。

ここで大事にしたのは切り分けです。総額をいくらで受けるかは人間が決める(過去案件やお客様との関係、受注確度など、数字だけでは決まらない要素が入るため)。一方で、その総額を各作業への内訳に割り付ける積算は、②で洗い出した項目をもとにAIに任せる。そして見積書そのものも、Misoca というクラウドサービスの画面をAIが操作して作りました。内訳を決めた本人(AI)がそのまま入力するので、転記ミスや認識のズレが起きません。

④ 送付メール:下書きまで用意して、人間は送信ボタンだけ

最後は、お客様へ見積書を送るメールです。これもAIが Gmail を操作し、宛先・件名・本文・添付(見積書のPDF)まで整えた下書きを用意しました。人間は最終確認して送信ボタンを押すだけ。送信そのものは人間が確認してから、という一線は崩しません。ただ、そこに至るまでの組み立ては、まるごとAIが担いました。

こうして振り返ると、対象の確認 → 原因と直し方の確認 → 見積作成 → 送付メールという、一人の担当者が受け持つ工程が、ひととおりAIの手で流れていったことになります。人間の出番は「総額の意思決定」と「送信の確認」という2つの要所だけでした。

ここまで任せられたのは、事前の「下ごしらえ」があったから

とはいえ、AIがいきなりここまでできるわけではありません。裏には、この案件フォルダにあらかじめ整理しておいた3つのものがありました。今回のスピードと確度は、その上に乗っています。

  1. 取扱説明書(CLAUDE.md):この案件は何か、そして「調査で触ってよい範囲はどこまでか、何を変えてはいけないか」といった、絶対に守るルール。安全に手を動かせる線引きを先に文章で渡してあるので、AIに調査を安心して任せられます
  2. 調べ方の地図(リファレンス):必要な情報をどこで・どうやって確認するか、設定やログはどこにあるか、検索処理がどのファイルに書いてあるか。過去にハマった落とし穴(文字コードを指定しないと日本語が化ける等)まで書いてある
  3. 調査ログ:過去の調査を日付つきで記録。今回の検索機能も数か月前に一度調べていて、その記録からスタートできた

これらは一度作れば、同じ案件を触るたびに効いてきます。AIに「担当者の仕事」を任せられる状態は、賢い頼み方ではなく、渡す前の整理でつくられます。散らかった情報のまま丸投げしても、AIは即戦力にはなりません。

まとめ:AIを「一担当者」として働かせる、とはこういうこと

今回いちばん伝えたかったのは、これです。AIは、一問一答の道具ではなく、一連の仕事で成果を出す“一担当者”として働かせられる段階に来ている。

一本の相談に対して、対象の確認から原因の究明、見積書づくり、送付メールの準備までを通しで受け持ち、最後に「送るだけ」の状態の成果物を並べる。人間が押さえるのは、総額の意思決定と送信の確認という要所だけ。これは「AIに質問した」のではなく、「AIという担当者に、この案件を一件まかせた」という感覚に近いです。

もちろん、丸投げすれば勝手に全部やってくれる魔法ではありません。触ってよい範囲のルールを先に渡し、案件の地図と過去の記録を整えておく。その下ごしらえがあってこそ、AIは一担当者のように一連の仕事を流し切れます(この準備の中身は本記事の後半で触れたとおりです)。

保守や受託の現場で「調査はAI、見積もりは人手」と工程ごとに切り分けている方は、一度、頭からお尻まで一件通しで任せてみてください。AIを“便利な検索窓”として使うのと、“一人の担当者”として働かせるのとでは、出てくる成果がまるで変わります。

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