Claude Code活用 #8 「これいくら?」の追加見積もりを、調査から見積書・メールまでAIと

Claude Code活用 #8 「これいくら?」の追加見積もりを、調査から見積書・メールまでAIと

「この機能、いくらで作れますか?」という追加見積もりの依頼に、Claude Code を使って最初から最後まで付き合ってもらった話です。

今回の対象は、ある会員制サイトのログイン認証の追加機能。すでに本体の見積もりは出していて、そこに「認証方式を増やしたい」という追加要望が来ました。これを見積もるには、(1) どう実装すれば実現できるかの技術調査、(2) 運用が始まってからかかる費用(ランニングコスト)の調査、(3) それらを工数と金額に分解する積算、(4) 見積書の作成と送付メールの準備、という性質の違う作業が一本につながっています。

この全部を、Claude Code に相談しながら進めました。見積もりを作る立場の方──受託開発・制作会社・社内のシステム担当の方に向けて、その進め方を書きます。

ポイントは、総額(いくらで受けるか)は人間が決める一方で、「何を作らなければいけないか」の洗い出しと、そこへの金額の割り付けは Claude Code に任せたところです。

出発点:「メールだけの認証に、SMSや認証アプリを足したい」

もともとの認証は、ログイン後にメールで6桁のコードを送るという、いわゆる二要素認証(MFA)でした。これに対して、「メール以外のチャネルも選べるようにしたい」という追加要望が出ました。具体的には、

  • SMS(電話番号にショートメッセージでコードを送る)
  • 認証アプリ(Google Authenticator や Microsoft Authenticator など、スマホのアプリ側でコードを生成する、いわゆる仮想デバイス)

を足して、ユーザーが好きな方法を選べるようにしたい、という話です。

ここで困るのが、「で、これをやるといくらなんですか?」にすぐ答えられないことです。SMS を足すと言っても、実際には電話番号の登録画面が要るのか、コードを送る外部サービスは何を使うのか、料金は1通いくらなのか──作らなければいけないものが見えていないと、金額は出せません。そこをまず、AI(Claude Code)と一緒に解きほぐしていきました。

ステップ1:どの技術要素で実現できるかをAIに洗い出してもらう

最初にやったのは、「メール・SMS・認証アプリの3方式を、それぞれどう実現するのか、特性はどう違うのか」を AI に整理してもらうことです。Claude Code から出てきたのは、こんな比較でした。

  • メール:すでに連絡先(メールアドレス)を持っているので、追加で取得するものがない。ただしセキュリティの国際的なガイドライン(NIST SP 800-63B)では、メールは正式な認証チャネルとして認められていない
  • SMS:電話番号を新たに登録してもらう必要がある。外部のSMS送信サービスを経由するので、送信のたびに費用がかかる。海外のユーザーには到達率や各国の規制という別の壁がある
  • 認証アプリ:スマホのアプリ側でコードを生成するので配信費用ゼロ、ネット接続も不要で海外でも同じように使える。セキュリティ強度も一番高い。ただし初回に「シークレットをQRコードで端末に移す」登録作業が要る

こうして AI に並べてもらうと、「ランニングコストと海外対応では認証アプリが有利」「ただしアプリを入れたくない人向けにSMSの価値もある」といった、方式選定の判断材料が揃います。単に「SMSを足す」ではなく、なぜその方式なのかを説明できる状態になりました。

ステップ2:「作らなければいけない画面・処理」をAIと特定する

見積もりの精度を一番左右するのが、このステップでした。「コードを送って検証する」という見えやすい部分だけでなく、その周りに付いてくる作業を漏れなく出すことが大事です。ここを AI と相談しながら、こういう項目を洗い出していきました。

  • 登録フロー:SMSなら電話番号を登録して確認する画面、認証アプリならQRコードを表示して初回コードで検証する画面
  • バックアップコード:スマホを失くしたときのために、登録時に使い捨てのコードを何個か発行しておく仕組み
  • リセット/再登録フロー:端末を紛失したらバックアップコードでログインして登録し直す、それも無理なら管理者がリセットする、という導線
  • 認証設定のマイページ:手段の追加・削除・既定の切り替え
  • 本人確認(登録者の妥当性):認証アプリはコードの送り先がいないので、「正しい本人が登録しているか」を別の方法で担保する設計が要る

特に最後の本人確認は、自分だけだと見落としがちなところでした。「アプリにコードを1回入れてもらえば本人確認になるのでは?」とこちらが考えていたところ、AI からそれは端末にシークレットが正しく渡ったかの確認であって、本人確認そのものではない──だから「すでに本人だと確認済みのログイン状態の中で登録させる」という設計が要る、という指摘が返ってきて整理が進みました。こういう設計上の落とし穴を AI と相談しながら潰せると、後から「これも必要でした」と追加見積もりになる事故を防げます。見積もりの抜け漏れは、そのまま赤字につながるところです。

ステップ3:運用が始まってからの費用をAIに調べてもらう

実装の工数だけでなく、作ったあとに毎月かかる費用(ランニングコスト)も見積もりに関わります。SMS は送信のたびに料金が発生するので、ここの見当が要ります。これも AI に、主要なSMS送信サービスの料金や特徴を調べてもらいました。

  • OTP(ワンタイムコード)に特化していて作り込みが少なくて済むサービス
  • もともとのインフラ基盤(AWS)に統合できるサービス
  • 国内向けは安いが海外発信に弱いサービス

といった選択肢を、海外ユーザーがいる前提で「1通あたりいくらか」「海外に強いか」まで AI に並べてもらいました。最終的には既存インフラと揃えやすいAWSの機能を軸にする方向で、月額のランニングがどのくらいになりそうかの見当も付けられました。

調べ物としては、自分でいくつものサービスの料金ページを開いて回るより、AI に任せたほうが圧倒的に速く、比較表の形で一覧化してくれるのが効きます。

ステップ4:総額は人間が決め、内訳はAIが分解・調整する

ここが今回の進め方で一番特徴的だったところです。見積もりの総額そのものは、こちら(人間)が決めます。過去の類似案件や、お客様との関係、受注の確度といった、数字の根拠だけでは決まらない要素が入るからです。

一方で、その総額を「設計いくら・SMS実装いくら・認証アプリ実装いくら・共通機能いくら・テストいくら」と内訳に割り付ける作業は、ステップ2で AI と洗い出した作業項目をベースに、そのまま AI にやってもらいました。「合計をこの金額に収めたい」と伝えると、各項目の重みを踏まえて配分し、「ここを厚め・ここを薄め」と調整もしてくれます。

人間が決めた一つの数字を、納得感のある内訳に分解する──この積算の事務作業を AI に任せられると、見積書作りの手間がぐっと減ります。総額の意思決定は人間、その内訳への落とし込みは AI、と切り分けたのがうまくいきました。

ステップ5:見積書作りも、AIが画面を操作して作る

内訳が固まったら、見積書の作成です。普段の見積書は Misoca というクラウドサービスで作っているのですが、その画面操作そのものも AI にやってもらいました。AI がブラウザを自動操作する仕組み(Playwright)を使い、見積書の新規作成、品目と金額の入力、といった操作を、こちらが画面を見ながら進めていきます。

項目数が多い見積もりを手で1行ずつ入力するのは地味に時間がかかる作業ですが、ステップ4で AI が決めた内訳がそのまま入力されていくので、「内訳を決めた本人(AI)がそのまま入力する」形になり、転記ミスや認識のズレが起きません。

ステップ6:送付メールの下書きまでAIに用意してもらう

最後は、お客様へ見積書を送るメールです。これも、AI が Gmail を操作する仕組みを通して、送信の一歩手前の「下書き」まで作ってもらいました。宛先・件名・本文・添付(見積書のPDF)まで AI が整えた下書きをこちらが最終確認して、送信ボタンだけを人間が押す、という形です。

送信そのものは人間が確認してから、というのは崩しません。ただ、そこに至るまでの組み立て──誰に、どういう文面で、何を添えて送るか──を下書きの形で用意してもらえると、確認して送るだけになります。

やってみての所感

今回いちばん良かったのは、性質の違う作業が一本につながった見積もり業務を、相談相手を替えずに最後まで進められたことです。技術の調べ物、運用費用のリサーチ、作業項目の洗い出し、金額への分解、見積書の入力、送付メールの下書き──普段なら頭の使い方を何度も切り替える必要があるところを、ひとつの流れの中でこなせました。

そして、意思決定(総額をいくらにするか、どの方式を採るか)は人間が握ったまま、その手前の調査と、その後ろの事務作業を任せる、という役割分担がはっきりしていたのも良かった点です。AIに丸投げするのでも、全部自分でやるのでもなく、「決めるのは人間、調べると並べるのはAI」の線引きが、見積もりという業務にはちょうど合っていました。

追加見積もりの依頼が来るたびに「調べ直して、分解して、入力して、メール書いて……」と腰が重くなる方は、この一連を相談しながら進めてみると、想像より早く一本仕上がるはずです。

Blue Leaf では、システム開発の見積もり・設計のご相談や、Claude Code を使った業務効率化の導入支援を承っています。お気軽にお問い合わせください。

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