デザイナーがいない会社でも、お客様向けのきれいなスライドは作れます(Claude Design)

弊社では、あるメーカー様に AIチャットボットを導入いただいております。この運用について、先日から月次レポートを毎月お出しすることにしました。
中身は数字と文章です。今月どれくらい使われたか、答えられなかった質問は何だったか、次に何を改善すべきか。内容そのものは手元のデータから作れます。
問題は スライド・デザイン でした。
弊社にデザイナーはいません。以前、見積もりに添えるAWS構成図をAIにコードで描いてもらったことはありますが、あれは図が1枚。今回は毎月出す冊子です。
私が資料を作ると、内容そのものは問題なくても、どうしても野暮ったいものになります。手元のメモをそのまま印刷したような見た目です。
ただ、せっかくお渡しするものです。開いたときに「おっ」と思っていただけるか。読んでみようと思える雰囲気になっているか。受け取ってよかったと感じていただけるか。 そこまで含めて作りたいと考えました。
中身を読んで理解していただき、価値を感じていただく。それに加えて、包み紙にあたるデザインの部分も含めて、受け取る体験そのものを良いものにしたい。 今回デザインにこだわったのは、その理由からです。
この記事は、そのデザインの部分を Claude Design で作った手順の記録です。中身の作り方(数字と文章をどう扱ったか)は、別の記事に分けて書いています。
Claude Design とは
Claude Design は、Anthropic が Anthropic Labs として出しているデザイン作成の機能です。claude.ai/design から使えます。
公式の発表によると、作りたいものを言葉で伝えると Claude が最初の版を作り、そこから要素ごとにコメントしたり、文字を直接編集したり、余白や色をつまみで調整したりしながら仕上げていく、という作り方をします。書き出しは Canva・PDF・PPTX・単体のHTMLファイルなどに対応しています(公式ヘルプ)。
現時点ではリサーチプレビューという扱いで、Claude の Pro・Max・Team・Enterprise の契約で使えます(Anthropic の発表)。
今回は、この「単体のHTMLとして書き出せる」という点が重要でした。理由は後述します。
先に結論:やっていることは2つだけです
手順の説明に入る前に、この記事でお伝えしたいことを先に書きます。やっていることは2つだけです。
1つめ。デザインのパターン出しを、AIにやってもらう。
私はデザイナーではないので、「余白をもう少し」「見出しの級数を落として」といった デザインの言葉で細かく指示ができません。 頭の中にある「なんとなくこういう感じ」を、相手に伝わる指示に翻訳できないのです。
なので、指示するのをやめました。代わりに、方向性の違う案を複数出してもらいます。 言葉で説明できないなら、出てきたものを見て決めればよい、という考え方です。
2つめ。良し悪しの判断は、自分でやる。
デザインの素人でも、出てきたものを見て「これは良い」「これは違う」と感じ取ることはできます。 作れないことと、選べないことは別です。私たちは日々あらゆる資料を目にしていて、読みやすい資料とそうでない資料の区別は、実務の感覚としてすでに持っています。
作るのはAI、選ぶのは自分。 この分担にすると、デザイナーがいない会社でも、お客様にお出しできる体裁のスライドが作れます。ここが、この記事の結論です。
今回はさらに、二段構えにしています
これに加えて、今回はもう一段あります。このレポートは 毎月お出しし続けるもの だからです。
1回きりの資料なら、Claude Design で作って書き出せばそれで終わりです。しかし毎月となると、来月も再来月も、新しい数字を入れて同じ体裁で出せる状態にしておく必要があります。
そこで、デザインができあがった後に、それを Claude Code に引き渡して、レポートを組み立てる仕組みそのものに組み込んでもらいました。 デザインを作る工程と、そこにデータを流し込む工程を、二段に分けています。
以下、この流れを順に解説します。
手順1:いきなり作らせず、方向性を4案出してもらう
最初にやったのは、レポートそのものを作らせることではなく、方向性を4案出してもらう ことでした。
依頼した内容は「月次レポートのデザイン方向性を4案、A4横で、それぞれ表紙とサマリの代表2ページずつ」というものです。
返ってきたのが、この4案です。

- 1a 静かな品格 — 明朝の白書:見出しを明朝にして余白を広く取った読み物寄りの体裁。罫線は極細
- 1b 積み上がりが見える — 濃紺のダッシュボード:表紙を濃紺にして「毎月届くシリーズもの」の顔をつくる案
- 1c 書簡の体裁 — 左袖ラベル+番号付き節:全ページ共通の左端にセクション名と番号を置く「頼れる報告書」の型
- 1d 数字が主役 — 大胆なタイポグラフィ:1ページ=1メッセージ。巨大な数字と短い一文だけで構成する
先に書いたとおり、私にはデザインの言葉がありません。もう少し詳しく書くと、困るのは指示を出すときだけではありません。
「きれいにして」と頼むと、AIは何かしら整ったものを返してきます。ただしそれが自分の求めているものかどうかは、見るまで分かりません。そして見て違ったとき、どう違うのかを言葉にするのはさらに難しくなります。
4案を並べて見ると、これが一瞬で決まります。今回は 1c を選びました。左端に章の名前が常にあるので、23ページの資料でも今どこを読んでいるか分かる。転送されて途中のページから読み始めても迷わない。選んだ理由まで言葉にできるようになったのが、4案出してもらった一番の効果でした。
手順2:選んだ1案で、使い回せる「部品」を量産する
方向性が決まったら、次はその1案で レポートに使う部品を作りためます。
最初に10個ほど作ってもらい、見て良さそうだったので「あと20個くらい作れたりする?」と追加をお願いして、合計30個になりました。

作ってもらった部品は、大きく2種類に分かれました。
数字を見せる部品:KPIタイル、目標の進捗バー、ランキング表、ファネル、「答えられた・答えられなかった」の対比、3列比較、内訳ツリー、データ品質の表示、削減効果の試算
文脈を伝える部品:頻出キーワード、集計定義の注記、注意喚起の3段階表示、インシデントの時系列、スコアカード、現場コメント、章扉、ミニ目次、添付資料リスト、用語集、巻末バナー
この30個は、その場で使うためというより、来月以降のために作りました。 今月は使わなかった部品も入っています。次に「先月比の推移を見せたい」となったとき、ゼロから作らずにカタログから選べる状態にしておく、という考え方です。
このとき、Claude Design 側からこういう指摘が返ってきたのが印象的でした。
04・06・08は毎月データ項目が増えるので、集計側の準備が必要かどうかだけ確認させてください。
27(削減効果)と22(お客様の声)は経営層への訴求が一番強い一方、前提値や実データが要ります。
見た目だけでなく、その部品を毎月埋め続けられるのか まで見ている指摘です。1回きりの資料なら気にしなくていいところですが、毎月出すものではここが問題になります。
手順3:成果物を持ち出して、実際の資料に組み込む
ここが今回のやり方の要になる部分です。
Claude Design の中で作ったものは、そのままでは今回のレポートになりません。中身のデータが入っていないからです。実際のレポートは、データベースからの集計結果を毎月流し込んで組み立てます。
そこで、こうしました。
- Claude Design で作った成果物(HTML と CSS 一式)を ダウンロードする
- そのファイル一式を Claude Code に読ませる
- 「このデザインを、いま動いているレポート生成の仕組みに反映して」と頼む
つまり、Claude Design を「デザイン担当」、Claude Code を「実装担当」として分けた ということです。デザインを考える場所と、それを動くものに組み込む場所を分けています。
補足:Claude Design だけでも完結します。載せたい内容を渡せば、そのまましっかりしたパワーポイントのスライドとして書き出せます(PPTX での書き出しに対応しています)。1回きりの資料であれば、こちらのほうが早いはずです。
今回そうしなかったのは、毎月このレポートを出し続けるからです。翌月からは、集計した数字を流し込めば同じ体裁で出来上がる状態にしておきたい。そのために、デザインを Claude Code に引き渡して、レポート生成の仕組みそのものに組み込んでもらいました。
別のツールで作った成果物を、普段の作業環境に持ち込んで続きをやってもらう。この形は以前、Claude Code から OpenAI のモデルを使うときにも取った構図でした。それぞれの道具が得意な場所で仕事をして、成果物だけを受け渡します。
反映にかかったのは 約20分 でした。デザイン一式を渡してから、出来上がったものを見て「デザインはいい感じ」と返すまでの実測です。

組み込んだあとに詰めたこと
一度で完成したわけではありません。組み込んだあと、次のような点を1つずつ直していきました。
| 直したこと | なぜ |
|---|---|
| 章の切り替わりに扉ページを追加 | ページが増えて、どこから新しい章が始まるか分かりづらくなったため |
| 左端の縦書き章名の視認性を調整 | 細すぎて読めなかった |
| 枠のデザインを復活 | 組み込む過程で、対応策を囲っていた枠が消えていた |
| 表の中の数字を上下中央揃えに | 上に寄っていて、行の高さが揃って見えなかった |
どれも、言われれば当たり前の話です。ただし これらは、自分で見ないと出てきません。 AIは「枠が消えていますよ」とは言ってくれませんでした。
このあたりの往復を繰り返した結果、資料は9ページから始まって、最終的に 23ページ になりました。
デザイナーがいなくても、できたこと・できなかったこと
今回のやり方で できたこと は、はっきりしています。
- 方向性を4つ見比べて、選んだ理由まで言葉にできた
- 毎月使い回せる部品を30個、一度に用意できた
- それを実際に動く資料生成の仕組みに、20分で組み込めた
- 結果として、お客様がそのまま社内で回せる体裁の資料になった
一方で、できなかったこと もあります。
出来上がったものを見て「ここが読みづらい」「この枠が消えている」と気づくのは、最後まで人の仕事でした。上の表の4件は、すべて自分で見て指摘したものです。
つまり デザインを作る作業は任せられましたが、判断する作業は残りました。 ただ、判断だけなら、デザインの専門教育を受けていなくてもできます。「読みづらい」「揃っていない」は誰でも言えるからです。
言葉にできない作業をAIに寄せて、言葉にできる判断を自分に残す。 結果的にそういう分担になりました。デザイナーを雇わずに顧客提出物の体裁を整えたい、という会社にとっては、現実的な選択肢になると思います。
次にやること
作った型は、来月からそのまま使えます。集計の仕組みは自動で走るようにしてあるので、毎月の作業は文章を書くところに集中できます。
ただし、資料の 中身 については、体裁とはまったく別の注意が必要でした。顧客に提出する資料にAIを使うと、放っておけば事実と違うことが載ります。実際、この日だけで5回それを止めています。
その話は 数字はAIに数えさせない。顧客提出レポートをAIと作るときの設計 に書きました。あわせてお読みいただければ幸いです。
