“メンテナンスフリー”な社内AIチャットボットを作りました ― 手間をかけずに、いつでも最新の回答

“メンテナンスフリー”な社内AIチャットボットを作りました ― 手間をかけずに、いつでも最新の回答

先日、お客様の社内向けシステム向けに AIチャットボットを開発し、実際の業務で使い始めるところまで対応しました

「この機能の使い方が分からない」「いまこの画面のデータはどうなっているのか」といった社内からの問い合わせに、その場で答えてくれるアシスタントです。

うれしいことに、導入後は社内からの問い合わせが目に見えて減り、「また一つ、AIに仕事を任せられた」という手応えのある実績になりました。この記事では、お客様名や業務内容が分かる部分は伏せたうえで、どんな仕組みで作ったのか/なぜその構成にしたのか/導入してどうだったかを実績紹介としてまとめます。「自社の業務システムにもAIを組み込めないか」と考えている経営者・担当者の方の参考になればと思います。

どんなチャットボットなのか

対象は、お客様が社内で使っているWebシステム(以下、本システム)です。画面の右下に常駐するチャット窓として組み込み、社員の方が次のような質問をできるようにしました。

  • 製品・仕様に関する質問:「この画面の承認の流れはどうなっていますか?」「この機能はどういうときに使うものですか?」といった、システムの使い方・仕様についての質問
  • いま見ている画面に応じた回答:チャットを開いたとき、その人が今どの画面(どのデータ)を見ているかを自動で判定します。そのため「これ、いまどういう状態?」のように主語を省いた質問でも、見ている画面に合わせて答えられます

ポイントは、マニュアルを別に用意してそこに答えさせるのではなく、本システムそのもの(プログラムと実際のデータ)を情報源にしていることです。理由はシンプルで、マニュアルは更新が止まると古くなり、管理の手間がかかるからです。「情報源を別管理しない」ことが、後述する“メンテナンスフリー”の肝になっています。

技術構成:AIエージェントキットをベースに

中核には AIエージェントキット(Claude Agent SDK) を採用しました。単純にAIへ質問を投げて答えさせるのではなく、AI自身が「必要な情報を自分で調べてから答える」構成です。

具体的には、次の2種類の“調べる手段”を持たせています。

  1. プログラム(システムの中身)を読む:仕様に関する質問が来たら、本システムの作りを調べて、画面の挙動や使い方を業務の言葉で説明します
  2. 実際の業務データを参照する:データに関する質問が来たら、実データに問い合わせて、いまの状況を答えます

この2系統を質問に応じて使い分けることで、「使い方の質問」にも「データの質問」にも一つのチャットボットで対応できるようにしています。

いちばんの工夫:いつでも最新を、安全に

このチャットボットで一番こだわったのが情報源の扱い方です。実際のシステム情報をそのまま見せる以上、「安全であること」と「常に最新であること」を両立させる必要がありました。

実データは“見るだけ”で参照(書き換えはしない)

データの質問には、コピーを別に持たず実際の業務データ(本番のデータベース)を直接参照しています。だから回答は常に“いまの実データ”です。

ただし、このデータに対しては “見るだけ”(読み取り専用)に限定しています。

  • 接続に使う権限そのものを参照専用にしてあり、仕組みとしてデータの書き換えができません
  • さらにアプリ側でも、実行できるのは「読む」操作だけに制限し、書き換え・削除につながる操作は弾くようにしています

なぜここまでやるか:AIに実際のデータを触らせるとき、一番怖いのは「意図せずデータを壊してしまう」ことです。万一AIが想定外の動きをしても、データには一切手を出せない――この“仕組みとして壊せない”状態を作ることで、安心して実業務に向けられるようにしました。

システムの中身は毎朝6時に自動で最新化

使い方・仕様の質問に答えるための情報源(システムの中身)は、毎朝6時に自動で最新へ更新される仕組みにしました。

本システムは日々改修が入ります。情報源が古いままだと「実際はもう変わっているのに、チャットボットは昔のやり方を答える」というズレが起きます。これを防ぐために、最新化を自動化しました。

結果として、

  • データは実データを直接見るので常に最新
  • 使い方・仕様は毎朝の自動更新で常に最新

という形になり、人手で情報を入れ直す手入れが基本的に不要になりました。これが「メンテナンスフリーなAIチャットボット」と呼んでいる理由です。

社内向けゆえの、厳格なアクセス制御

社内向けのシステムであり、実際の業務データにも触れるため、アクセス制御は何重にも作り込みました。「便利だけど、社外から覗かれたら困る」では実業務に出せないからです。

主に以下を組み合わせています。

  • アクセス元の制限(IP制限):許可した拠点・回線からのアクセスだけを通します。社外の不特定多数からは到達できません
  • 呼び出し元の制限(リファラー制限):チャットの裏側の仕組みは、想定したシステムから呼ばれたときだけ応答します。URLを直接たたくような不正な呼び出しは弾きます
  • ログイン済みかどうかの確認:本システムにきちんとログインしている利用者かどうかを確認します。ログインしていない人はチャットボットも使えません
  • 管理画面の保護:会話の内容を確認する管理画面には別途認証をかけ、限られた管理者だけが見られるようにしています

これらを重ねることで、「社内の、ログイン済みの利用者だけが、想定した画面から使える」という状態を担保しています。

導入してどうだったか:問い合わせが目に見えて減りました

ここが今回いちばんお伝えしたいところです。リリースして実際に使ってもらったところ、手応えのある効果が出ています

  • 問い合わせ対応の負荷が下がった:これまで各方面からの「使い方が分からない」という問い合わせを受けていた担当者から、問い合わせがかなり減ったという声が出ています
  • 社員が自分で解決できている:チャットの実際のやり取りを見ても、利用方法・使い方をその場で聞いて自己解決できているケースがかなり多いことが分かりました。わざわざ人に聞かなくても、その場で疑問が片づくようになっています
  • AIに仕事を一つ任せられた:これまで人が対応していた“一次対応”をAIが肩代わりすることで、社内全体の負荷が下がりました。「また一つ、AIに仕事を任せられた」という、確かな実績になりました

“作って終わり”ではなく、実際に役立ち、運用の手間もかからない――この両立ができたのが、今回の一番の成果だと考えています。

今回作ったものの“まとめ”

整理すると、今回作ったのは次のようなチャットボットです。

  • 社内向けシステムに、チャット窓として組み込み
  • 使い方・仕様の質問にも、いま見ている画面のデータの質問にも回答
  • 情報源は 実データ(見るだけ)+ 毎朝自動更新される仕組みで、常に最新・メンテナンスフリー
  • アクセス元・呼び出し元・ログイン確認などで、社内利用に限定した厳格なアクセス制御
  • 結果として、問い合わせが減り、社員が自己解決でき、社内負荷が下がった

「AIに社内システムを触らせるのは不安」という声はよく聞きますが、見るだけ(読み取り専用)・アクセス制御・情報源の自動更新をきちんと設計すれば、安全に・運用負荷を抑えて導入でき、ちゃんと効果も出る――という一つの実例になったと思います。

今後やっていきたいこと

リリースはゴールではなく、ここからさらに育てていく予定です。具体的には次のような拡張を考えています。

  • 業務知識をQA表として追加:いまは「使い方」と「データ」に答えられますが、加えて「この機能を実際の業務でどう使うか」という業務ノウハウをQA形式で整備し、そちらにも答えられるようにします。仕様だけでなく、現場での使いこなしまでカバーするイメージです
  • ログを見て原因を答えられるように:システムの動作ログを参照できるようにして、「こういうエラーが出たけど、なぜ?」といった質問にも、ログを根拠に原因を説明できるようにしていきます。一次調査までAIが肩代わりできれば、運用の負荷をさらに減らせます

こぼれ話:使ったAIモデルとコスト感

最後に少しだけ、裏側の話を。

今回AIの“頭脳”として使ったのは Claude Sonnet 4.6 というモデルです。AIには上位の「Opus」というモデルもありますが、今回の用途(使い方の案内・データの確認)ではそこまでの性能は不要で、Sonnetで十分実用的な精度が出ました。必要以上に高価なモデルを使わないことも、運用コストを抑えるうえでの判断です。

気になるコスト感ですが、1回の問い合わせ(やり取りが何往復か続くケースも含めて)でおおよそ50円ほどです。社員一人の問い合わせ対応にかかる時間や、聞かれる側の手間を考えると、十分に見合う水準だと考えています。「AIは使うとお金がかかりそう」というイメージがありますが、用途に合ったモデルを選べば、現実的な金額で運用できます。

おわりに

Blue Leafでは、こうした AIを実際の業務システムへ安全に組み込む開発に取り組んでいます。今回のように「実際のデータを扱うが、仕組みとして書き換えられない(壊せない)」「社内利用に絞る」「運用に手がかからない」「ちゃんと効果が出る」といった、実務で外せない要件を満たした形での導入が可能です。

「自社のシステムにもAIアシスタントを組み込みたい」「問い合わせ対応や一次調査をAIに任せたい」といったご相談があれば、お気軽にお声がけください。

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