
概要
不動産賃貸業務における書類管理を効率化するために開発した、AI活用型の自動ファイル整理システムです。
スキャンされた収支管理表などの各種資料を、AIが自動で内容を読み取り、適切なファイル名にリネームしてGoogle Drive上の指定フォルダへ自動格納します。従来は担当者が一つひとつ内容を確認しながら手作業でファイル名を付けて整理していましたが、このシステムにより完全自動化を実現しました。
課題
不動産賃貸業務では、収支管理表をはじめとする様々な書類がスキャンデータとして届きます。これらのファイルは最初は「scan_001.pdf」のような機械的な名前で保存されており、担当者は内容を一つずつ開いて確認し、物件名や年月日などを把握した上で、わかりやすいファイル名に変更してから適切なフォルダに保存する必要がありました。この作業は日々発生し、相当な時間を要していました。また、担当者によってファイル名の付け方にばらつきが生じることも課題でした。
解決策
n8n という生成AIをワークフローとして利用できるツールを用いて、自動化を実現しています。
Google Driveに新しいファイルがアップロードされると、自動的に処理が開始される仕組みを構築しました。AIがスキャンされたPDFの内容を解析し、物件名や年月日などの重要情報を抽出。それらの情報をもとに統一されたルールでファイル名を自動生成し、適切なフォルダへ自動的に振り分けます。これにより、人手を介することなく書類整理が完結するようになりました。
主な機能
本システムは、スキャンされた紙資料由来のPDFファイルに対応しています。スキャンPDFは文字情報が画像として保存されているため、通常のテキスト抽出では読み取れません。
そこで、PDFを一度画像形式に変換した上で、AIによる画像解析を実施。AIは画像から文字を認識し、物件名・年月日・書類種別といった重要情報を正確に抽出します。抽出された情報は自動的にファイル名のフォーマットに当てはめられ、「物件A_2025年10月_収支管理表.pdf」のような統一されたファイル名が生成されます。さらに、書類の種別に応じて各物件ごとの指定フォルダへ自動振り分けを行い、担当者が探しやすい状態で保管されます。
技術構成
ワークフロー自動化プラットフォームとして n8n を採用し、Google DriveのトリガーやHTTPリクエスト、条件分岐などを組み合わせた柔軟な処理フローを構築しています。AIによる画像解析には ChatGPT の API を活用し、スキャン画像から高精度で文字情報を抽出。処理結果はSlackへ自動通知され、担当者はリアルタイムで処理状況を把握できます。すべての処理はクラウド上で完結し、Google DriveとシームレスにAPI連携することで、既存の業務フローを変えることなく自動化機能を統合しています。
開発ポイント
本システムの最大のポイントは、スキャンPDFという画像ベースのデータからでも正確に情報を抽出できる点です。PDFを画像に変換し、AI画像解析によって文字認識を行うことで、従来の文字抽出技術では対応できなかった書類にも対応しました。また、n8n の柔軟なワークフロー設計により、書類の種別ごとに異なる振り分けルールを実装。物件A・B・C・Dといった複数の振り分け先にも対応できる拡張性の高い設計としました。さらに、処理結果をSlackで通知することで、自動化されていても担当者が状況を把握でき、安心して運用できる仕組みを整えています。
導入効果
導入後は、毎月発生していた書類整理作業が完全に自動化され、担当者の作業時間を大幅に削減することができました。一つ一つは小さな作業ではありますが、年間で見ると大きな時間削減効果となっています。また、ファイル名の付け方が統一されたことで、後から書類を探す際の効率も向上しました。さらに重要なのは、今回の仕組みを応用することで、他の書類処理についても同様の自動化が可能であることが実証されたことです。今後、類似の書類が増えた場合でも、同じ仕組みを横展開することで、さらなる業務効率化が期待できます。
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