
概要
建築業界の見積業務を効率化するために開発した、AI活用型の見積作成支援システムです。
パートナー会社から提出される見積書をAIが自動で解析し、自社フォーマットの見積書の下書きを自動生成します。従来は人手による転記作業が中心でしたが、このシステムにより担当者はAIが作成した下書きを確認・修正するだけで済むようになりました。
課題
取引先は数百社にのぼり、それぞれ独自の見積書フォーマットを使用していました。そのため、担当者はフォーマットごとに内容を確認しながら手作業で転記・整理を行う必要がありました。この作業には多くの時間がかかり、担当者ごとに表記や分類のばらつきが生じることも課題でした。見積業務全体の効率化と標準化が強く求められていました。
解決策
AIが下請け会社からの見積書(PDF)を読み取り、自社の見積システムに自動で下書きを反映する仕組みを構築しました。AIが抽出した情報は既存の見積システムにそのまま連携され、担当者は内容を確認して、自社向けに少しカスタマイズするだけで見積書が完成します。これにより、従来の人手による転記作業を大幅に削減し、精度とスピードの両立を実現しました。
主な機能
このシステムは、建築業界で扱われる多様な形式の見積書に対応しています。AIはPDFファイルから、項目名・仕様・形状・寸法・数量・単位・単価・備考といった明細情報を正確に読み取ります。また、備考欄に記載された自然文のコメントもそのまま自社見積に反映されます。さらに、複数ページにわたる見積書にも対応しており、長文・表形式の資料でも安定した精度を保ちます。これらの機能は既存の見積作成システムにシームレスに組み込まれ、担当者の操作感を損なうことなく利用できるようになっています。
技術構成
AIモデルにはClaudeを採用し、AWS Bedrock経由で運用しています。すべての処理はAWS上のサンドボックス化された環境で完結し、外部へのデータ流出リスクを完全に遮断。システム全体がセキュリティの高いネットワーク内で動作するよう設計されており、セキュリティと機密性を両立しています。これにより、企業の機密情報を扱う業界のニーズにも応えられる安全な仕組みを実現しました。
開発ポイント
本システムでは、数百社分の異なる見積書フォーマットを自動的に判別し、最適な抽出処理を行う柔軟なPDF解析ロジックを実装しました。また、複数ページの見積書にも対応し、大規模な案件にも対応しています。既存システムとの連携を考慮し、内部APIを介してスムーズにデータを受け渡せるモジュール構造としました。これにより、既存業務フローを崩すことなくAI機能を統合できました。
また、本格的な開発の前には、Python を用いたプロトタイプを開発し、頻度高くお客様とご相談を行いながら、AI精度のチューニングを実施。プロトタイプ開発を通してお客様は理解をより進められる形となり、満足の高い製品に育っていきました。
導入効果
導入後は、見積作成の作業量をAIによって大幅に削減。単純な転記作業が不要となり、担当者は確認や調整といった付加価値の高い業務に集中できるようになりました。また、見積書フォーマットのばらつきによる誤記や情報抜けも減少し、業務全体の品質が向上しました。AIによる支援が、人的リソースの最適化と精度向上の両立を実現しています。
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