AI活用術

AI を「作業担当」でなく「進行管理役」として使う:本番リリースの事例

AI を「進行管理役」として使う。タスク一覧・時間割・進捗管理・相談・エラーの切り分け

先日、お客様の会員制Webサイトを別のサーバーへ移す作業の、本番切替の日がありました。作業は朝7時過ぎに始まり、夕方6時前に一区切りつきました。

この1日、私の横にはずっと AI がいました。といっても、AIに作業を丸ごと任せたわけではありません。画面を操作して判断するのは私で、AIには 進行管理の担当 をしてもらいました。タスク一覧を作る、時間割を組む、進捗をその場で反映する、迷ったら相談に乗る、打つコマンドを用意する、エラーが出たら一緒に原因を探す、という役回りです。

リリース当日のような、やることが多く、順番を間違えられない仕事で、AIをどう使えるのか。その一例として参考になれば幸いです。

1. タスク一覧を作ってもらう

「作業詳細を決めたいから、ブラウザで見られる形にして」

当日の段取りは、2日前に詰めました。手元には、それまでに洗い出していた作業項目のリストがありましたが、当日の手順としてはまだ粗いものでした。

そこで、こう頼みました。

じゃあ、作業詳細を決めたいから、artifact で作ってブラウザで表示して

Artifact は、Claude が作ったWebページを自分のブラウザで開ける機能です。数分で、当日の作業を1枚にまとめたページが返ってきました。

43件のタスクに、IDを振ってもらった

そのあと、作業をページごと・データベースごとに分けてもらい、IDつきの43件の一覧になりました。

まとまり件数中身
A 準備5定時公開の停止、バックアップ、データの書き出しなど
D データベース4イベント・ニュースなどのデータ定義の変更
P ページ13トップ、ニュース、イベント、マイページなどの各ページ
I インクルード4複数ページで共通に使う部品
K サーバー8設定ファイル、アクセス制限、転送設定など
M・S・C 切替と確認9DNSの切替、ログイン連携、定期処理、通しの確認、お客様確認

このとき、元のリストから 抜けていた作業も足してくれました。たとえば「全体のスタイルシートの修正」や「wwwなしのアドレスから、wwwありへの転送」です。あわせて、「この設定が先に入っていないと、公開のときにサーバー上のプログラムが上書きされるおそれがあります」という、当日までに決めておくべき点も2件挙げてくれました。

このIDは、当日の進捗管理で役に立ちました(後述の「進捗を随時反映してもらう」)。

2. タイムスケジュールを作ってもらう

時間割を表にし、順番を組み替える

当日は、私の作業のあとに他社さんの作業、さらにそのあとに別システムの設定作業が続く、という段取りでした。その時間割を伝えると、AIが 時刻・作業・確認方法 の3列の表にしてくれました。

冒頭の順番について、私から「最初にプランを切り替えて一度公開し、それを丸ごとバックアップする形にしたい」と伝えると、すぐに組み替えてくれました。

時刻作業確認
9:00定時公開を停止停止したことを画面で見る
9:05プランを切り替えて公開公開完了の記録の日時が新しくなる
9:15サーバーを丸ごとバックアップファイルのサイズ・件数・圧縮の検査
9:25〜各種の変更作業後ろの作業をそれぞれ10分ずつずらす

「確認」の列があるのは、私が頼んだからではありません。AIが作った最初の表から、作業ごとに「終わったことを何で確かめるか」が入っていました。当日、作業のたびに「本当に終わったか」を迷わずに済んだのは、この列のおかげです。

3. 悩みを相談する

「意外とキツキツですね」

時間割を眺めていて、つい本音が出ました。

当日のタイムスケジュール、意外とキツキツですね。実際には8時くらいから、影響ないところを始めようかな〜。

これに対して、AIは2つの案を出してきました。

  • 案1(おすすめ): 8時に定時公開を止めて、全体を1時間前倒しする。2時間に詰め込んでいた作業が3時間に広がる。お客様には「8時から」と伝え直す必要がある
  • 案2: 定時公開は9時に止め、8時台は影響の出ない作業だけをする。ただし、前倒しできるのは15〜20分ほど

案2の理由として、「定時公開を止めるまでは、作業した内容が次の定時公開で今のサイトに出てしまう」ことを挙げていました。8時から何ができるかは、定時公開をいつ止めるかで決まる、という整理です。私は案1を選び、関係者にも「8時から」と伝えました。

「まだ作業あるけど、DNSの依頼をしていいかな?」

当日の昼前にも相談しています。DNSの切替は、依頼すると後戻りしにくい作業です。

ちょっとまだ作業あるけど、DNS作業依頼して良いかな?

AIの返事は「はい、依頼して大丈夫です」でしたが、その根拠として、それまでに確認できていた項目を表で並べてくれました。証明書、新しいサーバーの応答、アドレスの転送、ログイン連携、アクセス制限、公開面の表示の6点です。そのうえで、残っている作業は「切替を止める理由にはなりません」と分けて示し、「切り替えた直後の15分ほどは、人によって旧サイトと新サイトのどちらかが見えます」という注意も添えていました。

一人で作業していると、こうした判断を誰にも聞けずに進めることになります。根拠を並べて返してくれる相手がいるだけで、決めるのがずいぶん楽になりました。

4. 進捗を随時反映してもらう

「D4もdone」と言うだけで、表が更新される

当日は、作業ページを開きっぱなしにして進めました。最初に頼んだのは1行だけです。

随時、artifact を更新してね

あとは、作業を終えるたびに短く伝えるだけです。

D4も done だね

P1、完了

続いて、P4も実施済、公開済

前日に43件のタスクにIDを振ってあったので、短く言うだけで済みます。AIは該当の行を「済」にし、時刻を書き込んでいきました。逆に「P6ってなんだっけ?」「p.12 は何をしたら良いんだっけ?」と聞けば、その行の中身を答えてくれます。

「済」にすると忘れそうなものは、別の行に分けてもらった

途中で、作業は終わったけれど確認はあとで、というタスクが出てきました。そこで、こう頼みました。

TODOある場合には「済」以外がいいな〜。忘れちゃいそう。あっもしくは、後に、チェック用のタスクを追加でもいいかな。

AIは両方に対応しました。そのタスクを「設定済・確認は後で」という状態に変え、確認用のタスクを3行追加しています。以降も、確認が後回しになるものは同じ形で扱われました。

済んだ行は畳んで、残りを見やすく

昼前には、済んだ行が増えて表が長くなってきました。

完了のものは、アコーディオンを閉じる感じ?で行の高さを小さくできる?

すぐに、済の行が1行に縮み、クリックすると開く形になりました。「すべて開く」「すべて畳む」のボタンも付いています。この時点で、作業ページの版は44になっていました。

5. 実行するコマンドを作ってもらう

当日の作業には、サーバーでの操作やパソコン側の設定変更も混ざります。そこは、打つコマンドを用意してもらいました。

  • 事前確認の設定: DNSを切り替える前に新しいサーバーを見るため、パソコンの hosts ファイルに書く内容を出してもらいました
  • ブラウザの起動方法: 社内ネットワークのプロキシ設定が邪魔をして、hosts の設定がブラウザで効かないことが分かりました。そこで、対象のサイトだけプロキシを通さない Chrome を別に起動するコマンドを用意してもらいました。注意点(起動中の Chrome に吸収されないようにする指定など)と、作業後に設定を消すコマンドも一緒です
  • バッチ処理の手動実行: 定期実行の処理を手で動かすことにしたときは、いきなり書き込まずに、まず dry-run(書き込まずに結果だけ見る実行)で件数を確かめる という順番を提案してくれました

コマンドを自分で一から組み立てると、オプションの付け忘れや打ち間違いが起きやすくなります。どれも、何をするコマンドかの説明と一緒に出てくるので、中身を読んで納得してから実行できました。

6. エラーを一緒に調べてもらう

公開処理が失敗したとき

朝の早い段階で、サイトの公開処理が失敗しました。私は管理画面で状況を見に行きました。

このとき最初に確かめたのは、「守りたいファイルが無事か」でした。プログラム本体・設定ファイル・アクセス制限の設定が、朝に取ったバックアップと一致していること、転送は途中まで進んでいること、公開完了の記録はまだ書かれていないことが分かりました。AIは、中身は今のサイトと同じなので途中の状態でも見た目は大きく変わらないはず、という見立てと、失敗の原因の候補も挙げていました。

失敗したときに最初に知りたいのは「何か壊れたか」です。そこが分かるだけで、落ち着いて次に進めました。このあと公開をやり直し、完了を確かめてから次の作業に移りました。

504エラーが出たとき

データ定義を変更している最中に、管理画面が 504 エラー(時間切れ)を返しました。スクリーンショットを貼ると、AIは次のように切り分けました。

  • 管理画面のトップは普通に開ける。なので、全体が落ちているのではなく、重い処理だけが時間切れになっている
  • 原因の候補は2つ(直前に押したバックアップが裏で動いている/共有環境が混んでいる)。ただし、どちらも推測だと明記
  • 開き直す前に、エラーのときに保存しようとしていた変更が入っているかを先に確かめる(二重登録を避けるため)

一覧画面を経由せずに目的の画面を直接開くURLも、設定ファイルから探して教えてくれました。数分後に画面は回復し、変更もきちんと入っていました。

人は判断と操作、AIは段取りと確かめ役

振り返ると、この日の分担は次のようになっていました。

担当やったこと
私管理画面の操作、お客様・関係者との連絡、各段階で進むか止まるかの判断
AIタスク一覧と時間割の作成、進捗の記録、相談への回答、コマンドの用意、エラーの切り分け

本番リリースの日は、作業そのものより「次に何をやるか」「今どこまで終わったか」「これで進めてよいか」を考える時間のほうが長くなりがちです。この部分をAIに持ってもらったことで、私は目の前の操作と判断に集中できました。

AIに仕事を任せるというと、作業を丸ごと渡すことを想像しがちです。ですが、人が手を動かす仕事の横で、進行管理と相談相手をしてもらう という使い方もできます。リリース作業や引っ越しのような、一度きりで段取りが大事な仕事に、ぜひ試してみてください。


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